「ううっ……」
妹に负けて、自分のほうが弱いのだと认めさせられるのが悔しくないわけがなかった。
兄のそんな姿を见て、かえでは少し気まずさを感じたように头をかいた。
「な、何も泣かなくても……」
ちょっとやりすぎたかも、などと小さくつぶやきつつ、かえでは少し表情を和らげた。
「悔しいのはわかるよ、そりゃ当主の座だって取られるんだし、同じ斤木流をぶつけ合って负けたんだしさ。でもね、そんなこの世の终わりみたいな顔して泣いてるけど、わたしなんてもっと数え切れないほどお兄ちゃんに负けて悔しい思いしてきたんだからね?」
慰めるつもりなのか纳得させるつもりなのか判然としないが、とにかくかえでは総太郎に谕すような言叶をかけてくる。
「そういうところが、わたしを妹としてしか见てない証なんだよね。ずっとライバルのつもりだったのにさ」
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そして、かえでは総太郎の肩をかつぐようにして立ち上がらせる。
「うっ……なんだ……?」
「今の季节、こんなところで寝てたら风邪引いちゃうからね。そっちの母屋に移动しようと思って。お兄ちゃんとやりたいこともあるし」
総太郎は、かえでが自分をどうしようとしているのか予感はあった。前回もされたことだ。
それを思うと、悔しさだけでなく少しの忧郁さと、そして微量のドキドキが心の中に涌いてきた。やはり、负けた以上はそうした行为も避けられないのだろう。
そして、母屋の中に入り、かえでは布団を敷いてその上に総太郎を寝かせる。腕组みをして兄を见下ろしながら、かえでは宣告する。
「さてと。まず、この胜负で决まったことは、わたしが斤木流の当主となること。今この瞬间から譲ってもらうからね」
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「……わかった」
男に二言はない。この期に及んで约束を违える気はなかった。
母屋に连れてこられる间に现実を认めることもできた。もちろん大きな悔しさがずっと胸にくすぶってはいるが、涙はもう止まっている。
「今から斤木家と斤木流の当主はかえでだ。秘伝书も、家に帰ったら渡す」
「うん」
「かえでは强い。ここ一年いろんな奴に负けてばかりだった俺よりも、流派を発展させていってくれるかもしれない」
そう口にしてしまえば、思ったよりもすっきりした気分になった。
形は违ったが、今になって祖父の望んだ形におさまっただけのことだ。しかも実力をぶつけ合って决めたことなのだから、祖父に反発を覚えた顷とは违って纳得もいく。
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