「なぜだ……」
「うん?」
「なぜそんなにズカズカと俺の间合いに……ッ!」
ブォンッ!
完璧な不意打ちだった。
健士がキックを出せる状况ではないとサリアもわかっていたはずだ。
さすがに惊いたサリアは一歩下がる。それを追いかける健士。
(いけるっ!)
蹴り足を戻してスイッチ。
もっと速く蹴りたいのに、疲労のせいか速度が遅い。
(くそっ、もっと速く动け俺の体!)
ようやく反対侧の足で、もう一度蹴りを放つが、
「えいっ!」
ゴキイイィィ!
彼の蹴りを难なくキャッチしたサリアがドラゴンスクリューで切り替えした。
観客の歓声をよそに健士は违和感を覚えていた。
(い、今の动きに全くついていけなかった……そんなに速くなかったのに!)
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このラウンドになってからすべての判断がワンテンポ遅れる。
それがどれだけ致命的なことか。
おかげでサリアのスピードを健士は追い越せずにいた。
解けない疑问が彼の口からつぶやきを生じさせる。
「……俺に何をした」
负け惜しみとも取られかねない発言だが、サリアは平然と返す。
「女の唇に毒が涂ってあるなんて、アタリマエのことだと思わないの?」
「!!」
健士は戦慄する。
知らぬ间に毒を盛られていたことに、サリアの今の一言で気付かされた。
(そうか、だからあんなに执拗なキスを……)
今更それを抗议しても仕方のないことだった。
歯噛みする健士に向かってサリアが両手を広げてみせた。
「怖がらずにおいでなさい、ボウヤ。可爱がってあげるから」
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「く、くそおおおおおおおおおお!!」
そこから先、健士は我を忘れてサリアへ向かっていった。
がむしゃらなパンチやキックを何度も叩き込む。
しかしそれらは全てあっさりかわされてしまった。
「さっきよりも遅くなってるわ」
「ハァハァハァハァッ! こ、このおおおお!!」
「自分では気づけないでしょうね。うふふふふ」
华丽な舞を踊るようにサリアは攻撃を避け続ける。
その舞が軽やかであればあるほど健士の胸に絶望感が去来する。
そんな时、サリアが健士から2メートルほど距离をとった。
「ねえねえ、ボクシングルールでも私になら胜てると思っていた。そうでしょう?」
「当たり前だ! 俺は、キックボクシングのチャンピオンだからな」
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